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デジタルから見た世界のまちづくり/フィンランドに行く~ヘルシンキ市役所に市民からの提案が次々に届くわけとは

こんにちは。政策創造課スマートシティ担当の松村です。

前回の記事では、市民参加のためのオンラインプラットフォームが世界に広まるきっかけとなったバルセロナの「decidim」について紹介しました。decidimは、「まちのことは自分たちで決める」といったバルセロナ市民の「自主性」が表出したオンラインプラットフォームでした。

今回の記事では、世界幸福度ランキング6年連続1位の国、フィンランドで運用されている市民参加のためのオンラインプラットフォームについて紹介していきます。もしかすると、世界幸福度ランキング6年連続1位と何か関係があるかもしれませんね。それでは、見ていきましょう。


北欧の国、フィンランド、皆さんはどんなイメージを持っていますか?
世界幸福度ランキング上位の国、社会保障制度が整っている国、税金が高い国などのイメージが強いのではないでしょうか。

フィンランドの首都ヘルシンキの街並み

今回は、そんなフィンランドの首都、ヘルシンキで運用されている「OmaStadi」と呼ばれる市民参加のためのオンラインプラットフォームを紹介していきます。

ヘルシンキの「OmaStadi」を見れば行政のことが分かる?

さて、今回のOmaStadiはdecidimと何が違うの?
と思われた皆さん、実はOmastadiのベースは、前回の記事で紹介したバルセロナのオープンソースプラットフォーム「decidim」がベースとなっています。「じゃあ一緒じゃないの?」と思うかもしれませんが、オンラインプラットフォームのベースが同じでも、導入した経緯や活用の方法など、その使い方は都市によって様々です。

フィンランドでは、他の国と同様に、選挙の投票率低下や、社会問題に関する議論の偏りなどの課題を抱えており、次の3つの目標を掲げ、2018年からヘルシンキ市で導入したものがOmaStadiになります。

①市民の影響力を高める
②公平性を促進する
③市民の理解を高める

OmaStadi導入の3つの目標

特に印象的なのが、「③市民の理解を高める」です。
地方自治体の取組って、使われている言葉も難しく、とにかくよく分からない、と思われている方って結構多いのではないでしょうか。こういった「よく分からない」「分かりづらい」といった印象が、地方自治体への不信感に繋がってくるのではないかとヘルシンキ市は考えたようです。そこで、まずは市民の地方自治体に対する「理解を高める」ことから始め、地方自治体の取組に少しづつ関心を持ってもらい、最終的に「①市民の影響力を高める」ことを目指していこうと考えているようです。

市民が行政に与える影響とは?

では、市民の影響力を高めるとはどういうことなのでしょうか?
市民参加のためのオンラインプラットフォーム「OmaStadi」は、都市開発に関する予算の使い方を決定することに活用しています。

え、予算の使い方を決められるの?と思いますよね。
これは、参加型予算と呼ばれる仕組みで、2010年以降のヨーロッパではまちの意思決定の民主化のため、多くの都市で実施されています。

OmaStadi「参加型予算」
(OmaStadi Participatory budgeting in Helsinkiから引用)

ヘルシンキ市は、OmaStadiを導入した当初から、この参加型予算と呼ばれる仕組の中で運用を行っているのです。予算の使い方の意思決定プロセスに対して、最初から市民が影響力を与えているのはすごいですね。OmaStadiは、地方自治体の予算の使途決定プロセスに対し、市民の影響力を高めるためのオンラインプラットフォームです。

では、どのように市民の意見が影響を与えることができるのでしょうか?

アイデア提案が予算化?その流れとは

具体的には、次の①から⑥の流れで予算の使い方を決定していきます。

①市の予算の使途に関するアイデアを提案する
②市役所が実現可能性の有無の評価をする
③市役所が提案されたアイデアを組み合わせていく
④市役所が提案内容の見積もりを算定する
⑤投票する
⑥提案について議論を重ねて実装していく

OmaStadi 3.0. 予算の使途の決定プロセス
(デジタル市民参画プラットフォーム海外事例報告書/株式会社Liquitousより引用)

予算の使途に関しては、まず市民がアイデアを提案します。
このアイデアの提案ですが、ヘルシンキ市に住む13歳以上であれば誰でも投稿することができます。

その後、市役所による実現可能性の判断や、提案内容のグループ化、見積もりの算定など、実装に向けて必要な整理を行っていきます。

そして、最後に市民による投票結果をふまえて実装化する提案内容が選定されていきます。この投票も通常の選挙とは異なり、13歳以上のより多くの市民が意思決定に参加することが可能な点は、オンラインプラットフォームの強みです。

予算の使い方を決定していく一連のプロセスを見ていく中で、市民が自分たちの意見やアイデアが予算の使途に対して直接的に影響を与えることができ、自分が提案したアイデアが実装される可能性があることが明確に示されているからこそ、地方自治体の取組(市民参加型予算)に参加してみようと感じるのではないかと思います。

鎌倉でも高める市民の影響力

さて、鎌倉でも市民の影響力を高めるため、オンラインプラットフォームと対面のワークショップを組み合わせた「市民参加型共創プラットフォーム」を活用した取組を西鎌倉地域で進めています。(詳細はこちらの記事から)

9月24日(日)に開催したワークショップでは、オンラインプラットフォームに投稿された32件の「西鎌倉地域にあったらいいな」をもとに、4つのグループごとにプロジェクトを作成しました。

9月24日(日)に開催したワークショップの様子

現在、ワークショップで作成した4つのプロジェクトをもっと良いものにしていくため、皆さんのアイデアをオンラインプラットフォームで募集しています。西鎌倉地域で進めていくプロジェクトを一緒に作ってみたいなと思われた方、是非チェックしてみてください。

さて、次回の記事では、先ほどお伝えした、9月24日(日)に開催した西鎌倉地域でのワークショップの様子をお伝えしたいと思います。どんな雰囲気で、どのようにプロジェクトの素案が生まれたのか、是非ご覧ください。

※本記事は、デジタル市民参画プラットフォーム海外事例報告書(株式会社Liquitous作成)をもとに作成しています。




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