【後編】導入ではなく、共創するスマートシティサービス~あなたの声がサービスを創り出す~
前回の記事では、2022年度のリーディングプロジェクトとして位置付けている2つのテーマのうち、「防災・減災を起点とした複数分野の連携」に関する取組についてご紹介しました。
今回の記事では、2022年度のもう1つのリーディングプロジェクトのテーマである「市民目線の暮らしやすさ」に関する取組について紹介していきたいと思います。
「暮らしやすさ」って聞かれた時、何を思い浮かべますか?
さて、ここで皆さんに一つ質問があります。
皆さんにとって「暮らしやすさ」とはなんですか?
「自然環境に恵まれていること」、「地域活動が活発なこと」などなど、様々な意見が出てくると思います。当然のことながら、この暮らしやすさは、その方の年齢や、住んでいる地域などによって大きく違ってきます。
実は行政にとって、市民の皆さんが感じる率直な「暮らしやすさ」を把握することって、結構難しいんです。これまでも、市役所では市民の皆さんから意見を募集する方法として、市民対話やアンケートなどを実施してきましたが、実際に意見を発信された方って結構少ないんじゃないかと思います。
そこで、現在、多くの皆さんが持ち歩いているスマートフォンやタブレットから、いつでも自分の意見が発信できたら、もっと多くの方が参加できるのでは?という想いから、オンライン上で市役所に対し意見を発信することが可能な「市民参加型オンライン共創プラットフォーム」を導入し、昨年11月から西鎌倉地域で試験運用を開始しています。
市民参加型共創プラットフォームについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
昨年11月からの試験運用で見えてきた課題「地域内の移動」
では、この西鎌倉地域での試験運用では、どういったことに取り組んでいるのかご紹介したいと思います。
元々、西鎌倉地域では、「西鎌倉地区社会福祉協議会」や「西鎌倉地区自家用車を止めても安心して暮らせるまちづくり実行委員会」といった組織が、まちの課題を明らかにしながら、その解決に向けて取り組まれていました。こういった既に始まっていた地域の取組に、市が参画する形で、昨年11月から「市民参加型オンライン共創プラットフォーム」の試験運用を開始しました。
試験運用の具体的な進め方は、次のとおりです。
また、これらの全てのSTEPにおいて、オンラインで皆さんから意見を募集するだけでなく、対面のワークショップでの議論も重ね、取組を進めていきました。
まずSTEP①では、次の質問に対し、オンラインと対面のワークショップで意見募集を行いながら、西鎌倉地域の課題を具体化するため、議論を進めていきました。
「悩み」に関しては、歩道、車、バス、駅、といった「移動」に関する意見が多く、また「困っていそうな方」については、高齢者、子ども、といった他世代と比較して、地域内での活動頻度が高い方々が多く挙げられました。
そこで、「地域内の課題」が西鎌倉地域の課題なのではないか、とSTEP①では整理しました。
次にSTEP②では、次の質問や視点で意見募集を行いながら、ありたい理想の姿を明確にするため、オンラインと対面のワークショップで議論を進めていきました。
ワークショップでは、オンラインで皆さんから出てきた意見を、出かけたくなる「目的」の充実と、出かけやすくなる「手段」の充実の2つのグループに分けて整理しました。そして、ワークショップの終盤で、「自分自身の視点」と「身の周りの方(まち)の視点」で1番理想の姿に近い項目だと思うものに、それぞれシールを貼ってもらいました。
すると、自分自身の視点では、出かけたくなる「目的」の充実を望んでいる傾向が強いのに対し、身の周りの方(まち)の視点では、出かけやすくなる「手段」の充実が必要だと感じている傾向が強いことが分かりました。
スマートシティ官民研究会を開催、民間企業や大学と動き始めました
さて、西鎌倉地域の「課題」と「ありたい理想の姿」が明確化されてきたところで、これからはSTEP③の「具体化された課題を解決し、ありたい理想の姿になるための仮説を検討する」に進んでいきます。ここで出てくるのが、前回の記事でご紹介した、市、民間企業、大学等で組織するスマートシティ官民研究会です。
実は、今年の1月20日(金)に鎌倉商工会議所の地下ホールで開催した、スマートシティ官民研究会のワークショップで、既に会員の皆さんと、西鎌倉地域の「地域内に移動」の課題解決に向けた共創の取組を開始しているんです。
具体的には、市民の皆さんが意見を投稿したものと同じ「市民参加型オンライン共創プラットフォーム」を使用しながら、参加された会員の民間企業等の方々から「市民の皆さんがちょっと出かけたくなる」をテーマに、スマートシティサービスのアイデアを投稿してもらいました。
手を挙げてアイデアを発表するよりも、参加者が気軽にアイデアを会場の皆さんに共有することができ、オンライン上に様々なアイデアが出てきました。
また、参加された会員の民間企業等の方の中には市民の方も多く、市民としての目線からも様々なアイデアが寄せられました。また、鎌倉に土地勘のない会員の方も、市民目線で本市の課題に触れる機会になりました。
「市民参加型共創プラットフォーム×官民研究会」で西鎌倉地域の移動における解決策を考えていきます
このように、地域の課題を明らかにし、その課題解決に向け進めていくためには、「市民参加」と「官民共創」が大切になっていきます。
行政が市民や地域に関わる方々と、課題を明確にし、その課題解決に向けて、地域主体で動いていく場が「市民参加型共創プラットフォーム」であり、行政が民間企業や大学等と、課題解決に向けて共創していく場が「官民研究会」なんです。
この2つの基盤が連携しながら課題解決に向けて動いていくことで、「地域」、「行政」、「民間企業、大学」による共創の仕組みが回っていくんですね。
そして、誰かがやる、誰かがやってくれる、ではなく、まずは自分ができることを考えてやってみる、そういった考え方が共創にとって1番大切なのかもしれませんね。