観光客も住民も働く人も、みんなが困る鎌倉の渋滞
こんにちは、市民ライターの田辺です。鎌倉市公式noteマガジン「まちとみち」では、鎌倉市の交通政策について紹介します。
「道路が渋滞する理由を探ると鎌倉時代にまでさかのぼる!?」では、鎌倉の交通渋滞が発生する背景を紹介しました。
今回の記事では、渋滞が訪れる人、住む人、働く人にどのようなデメリットをもたらしているかを探っていきます。
観光に来たのに……クルマの中で過ごす時間が長い
訪れる人の立場では、渋滞に遭うことによって観光に当てる時間が少なくなってしまうことが最大のデメリットでしょう。
鎌倉市が行った調査では、国道や県道など鎌倉市内の主要な道路の旅行速度(道路での移動に要した平均時間)が20km/h未満となる「混雑している道路」は、鎌倉市と神奈川県とで比較すると、鎌倉市は平日2.6倍、休日3.5倍となりました。
せっかく鎌倉に来ても、目的地で過ごす時間より、クルマの中で過ごす時間のほうが長くなってしまいますね……。
休日は消防車両の到着時間が倍に!
週末や連休は観光客の増加によって幹線道路が渋滞すると、裏道となる生活道路にまでクルマが流入してしまいます。それはデータによっても明らかとなっています。2019年度に国土交通省が公表した資料によると、生活道路にあたる辻説法通りは、平日・休日ともに昼間の12時間で約3000台の車両が通過し、休日は平日よりも小型車両の割合が10%上昇していることがわかりました。
鎌倉に住む人にとっては、緊急車両の遅れや時刻表通りにバスが来ないなど、生活に悪影響を及ぼします。鎌倉市の調査(2013年~2017年)では、消防の現場到着にかかる旅行速度は休日が約9.9km/hで、平日の約17.8km/hの半分。つまり、休日は到着にかかる時間が、倍になっているということに!
物流などで働く人にとっては、渋滞は長時間運転によるドライバーの過労やストレスを招く恐れが。企業としても、人件費や燃料費の増加、排ガスによる環境への影響、納期遅延などのトラブルが発生することも考えられます。荷物が予定通りに届かないとなると、市内の飲食店や小売店にとっても大きな問題となるでしょう。
観光都市をめざすために
鎌倉に魅力を感じ、多くの観光客が訪れることは、経済効果や雇用創出という点でも歓迎すべきことです。
しかし、来訪するクルマによって発生する渋滞が、鎌倉で暮らす人や働いている人に悪影響を与えていることも事実です。観光客にとっても、移動に時間がかかって疲れる、観光に集中できないなど、ネガティブな印象を与えてしまうかもしれません。
いま鎌倉市は「住んでよかった、訪れてよかった」と思える観光都市をめざし、交通環境の改善に取り組んでいるところです。
次号では、交通渋滞の緩和のために鎌倉市が行っている施策を紹介します。