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ごみ出しした後、どうなるの?~飲食用カン・ビン編~

こんにちは。市民ライターの原です。
2023年も秋が過ぎ、冬らしい陽気になってきました。そんな季節の変わり目は、温かい缶コーヒーでひと息ついたり、ドリンク剤で元気をチャージしたくなります。
こういった飲食用のために使われている缶や瓶は、飲み物だけではなく、海苔やお菓子の缶、ジャムやドレッシングの瓶など、意外と身の回りにあふれていますよね。
実はこの「飲食用カン・ビン」も、使い終わった後に資源物としてリサイクルされているのです。
これまでの記事で、「容器包装プラスチック」と「植木剪定材」について、分別後の流れや作業現場で起きている困りごとなどをレポートしてきました。

今回は、笛田リサイクルセンターと呼ばれる、飲食用カン・ビンなどの資源物の中間処理を行っている市の施設から、中間処理の工程や、ひと手間が必要な分け方・出し方について、レポートします!




リサイクルのために必要な「中間処理」

鎌倉市では、各地区で週に一度「飲食用カン・ビン」をコンテナで収集しています。
それぞれ、カンは黄色のコンテナ、ビンは青色のコンテナに出すようになっています。

飲食用カン・ビンが入ったコンテナ。袋に入れずそのまま出します

コンテナに出された飲食用カン・ビンは、コンテナごと収集車に載せられ、鎌倉市が運営する笛田リサイクルセンターに運ばれます。

笛田リサイクルセンター。小学生の時に社会科見学で訪れた方もいるのではないでしょうか?


この笛田リサイクルセンターは、家庭から出される資源物を再び製品などの原料になるように、選別・圧縮といった中間処理を行う「中間処理施設」です。
容器包装プラスチックや植木剪定材と同じく、飲食用カン・ビンも中間処理を経てリサイクルされるのです。

飲食用カン・ビンの収集からリサイクルまでの流れ

では実際に、笛田リサイクルセンターにおいて飲食用カン・ビンの中間処理はどのように行われているのでしょうか?
笛田リサイクルセンターの大宮さんに案内していただきました。

①計量
収集した飲食用カン・ビンの量を確認するため、コンテナを載せたトラックごと計量します。
計量は、コンテナを載せた状態と降ろした状態で行われ、その重さの差が収集した飲食用カン・ビンの量となるのです。

コンテナを載せたトラックと計量器
コンテナを降ろしたあとも計量します


②受入
飲食用カン・ビンの入ったコンテナを受け入れます。

トラック内の様子。飲食用カン・ビンが入ったコンテナがびっしり!
防音のために二重構造になっている受入スペース
受入後、レールに乗って施設内を運ばれていくコンテナ

③選別
カンは磁石を用いた磁選機とアルミ選別機でスチール缶とアルミ缶に、ビンは手作業で色ごとに選別します。

機械で選別されるカン。機械の下には取り除かれた不適物が
人の手で選別されるビン。一つひとつ手作業です

④圧縮
選別されたアルミ缶とスチール缶は、それぞれ金属圧縮機によって、高さ40㎝×幅75㎝×厚さ15㎝のブロック状に圧縮されます。

圧縮された缶。1つあたりおよそ20kgにもなります

⑤出荷
圧縮されたアルミ缶とスチール缶は、リサイクルのために金属会社などに売却されます。
その後、アルミ缶はアルミ生産工場などを経由し、フライパンや飲料用缶などのアルミ製品に、スチール缶は製鉄所などを経由し、建築資材や鉄道のレールなどさまざまな鉄製品に生まれ変わります。

色ごとに選別したビンは粉砕処理され、公益財団法人日本容器包装リサイクル協会において新しいビンに生まれ変わります。

また、リターナブル瓶と呼ばれる、繰り返し使えるよう製造されたビール瓶などは、各種メーカーで再利用するために売却されます。

きれいに洗浄して中身を詰めて、再使用されます


分け方・出し方に施された工夫

笛田リサイクルセンターにおいて、不適切な分別がされていないか、異物の混入がないかなど、飲食用カン・ビンがとても丁寧に中間処理されていることが分かりました。
どのような工夫がされているのかなど、大宮さんに質問してみました。

―ところで、他のごみは袋に入れて出しますが、どうして飲食用カン・ビンはコンテナで収集しているのでしょうか?

大宮さん
「袋に入れての収集は、異物の混入や悪臭の問題が発生しやすいのですが、コンテナを使って飲食用カン・ビンを見える状態で収集することで、資源としてリサイクルしやすい良い状態でセンターに届きます。良い状態で収集できるので、センター内も臭わず清潔に保てます」

―飲食用カン・ビンを自宅で保管していた袋を繰り返し使えてラッキーと思っていましたが、コンテナ収集はより良いリサイクルのための工夫なのですね。
また、収集や中間処理を行う方々の衛生環境の向上にも繋がっていることがわかりました。
収集にあたって、困っていることはありますか?

大宮さん 
「食べ物や飲み物が残っていたり、未開封のまま出されたりすることがあります。こういったものは、再度人の手で選別・洗浄しなければなりません」

―私たちがひと手間を省いてしまうと、中間処理の工程が増えてしまいますね。未開封の食品が出されることもあるのですね。

大宮さん
「カン・ビンに入った食品は、長期保存のために賞味期限が長く設定されていることが多く、ついついギリギリまで置いたままにしてしまいがちです。
賞味期限内に食べきれなさそうな食品があった場合は、ごみ減量対策課が実施している『フードドライブ』の利用をご検討ください」

―そういう仕組みがあるのですね。ごみの発生を抑制(リデュース)することができ、食品ロスの削減にもつながりますね。
他にはいかがですか?

大宮さん
「飲食用カン・ビンを入れるコンテナに、スプレー缶、哺乳瓶、電球、金属製のキャップなど、正しく分別されていないごみが入っていることがあります」

中間処理において選別された処理不適物

―飲食用カン・ビンには該当しないものが混ざっていることがあるのですね。

大宮さん
「ひとつの製品でも、本体は飲食用のビン、ふたの王冠は燃えないごみなど、毎日のごみ出しも大変ですよね。でも同じ金属製であっても、ふたの王冠などはゴムが入っているためにリサイクルに適さないことから、分別する必要があるのです」

―手間でも分別することは大切ですね。
飲食用カン・ビンに限らず、どのように出したらいいか分からないごみがあった場合は、私も活用しているLINE『鎌倉ごみ調べ』を活用してみてはいかがでしょうか?


ひと手間かける分け方・出し方には、ふかーい意義がある

飲食用カン・ビンは、地区にあるクリーンステーションからコンテナで収集され、中間処理施設で人の手や機械を使って選別・加工されたリサイクルしやすい状態で次のプロセスへと送り出されます。
 
家でのひと手間をかけた分け方・出し方が、収集や中間処理を行う人々にとっての労働・衛生環境の向上につながり、使い終わった飲食用カン・ビンが資源物としてリサイクルされる効率を高めていく。まさに循環型社会です。

また、リサイクルのために飲食用カン・ビンを売却しているごみ減量対策課によると、この売却益は市の歳入になり、ごみの減量・資源化に役立つ様々な事業に使われています。
令和5年度では、アルミ缶は年間約4,900万円、スチール缶は年間約900万円、リターナブルビンは年間約3万円の売却益を見込んでいるとのこと。私たちが適正に出すことによって、ごみから価値あるものに生まれ変わっているのですね。

日々のごみ出しは大変です。しかし、家でのちょっとしたひと手間が、ごみ処理に関わる方々の労働環境・衛生状況の向上につながる。
使い終わった飲食用カン・ビンの資源物としてリサイクルされる効率を高める。

そんな文章では読んだことがあってもなかなか想像し得なかったことが、笛田リサイクルセンターを訪れて、自分の家でのひと手間が、誰かのためになる、循環型社会のためになるといった意義への解像度が上がった機会となりました。

みんなにも読んでほしいですか?

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