ダウンロードできます! 感染防止ポスター『いざ、鎌倉 その前に...』 | なぜそれ制作後記
こんにちは、ナルコト事務局の林です(ナルコトについては、こちらの記事をご一読ください)。9月から展開している2つのノートアカウント(鎌倉市公式note「ナルホド事始メ」、鎌倉市教育委員会note)で展開されているマガジンの名前やそこで表現されているデザインの背景、そして鎌倉市がつくった制作物などのうまれた背景などを紹介していく「なぜそれ制作後記」。今回は、昨年2020年9月に公開したポスター「いのちを守る3つのマナー〜機転を利かせて対応しよう〜」が生まれた背景をご紹介。
3種類の「いのちを守る3つのマナー」2020年10月、鎌倉駅内に掲示
はじめに、今般の新型コロナ禍において、医療従事者・介護従事者のみなさま、そして、様々な分野において、「まちの社会機能」を支える方々に心より感謝を表します。ありがとうございます。
ポスター「いのちを守る3つのマナー ~機転を利かせて対応しよう~」は2020年9月から本庁舎、支所、各駅などで掲示しています。(このポスターのデザインデータは、こちらよりダウンロード可能です。ご自由にお使いください。弁慶《べんけい》バージョン 那須与一《なすのよいち》バージョン 文覚《もんがく》バージョン)
こうしたい、あぁしたい、これはダメ... そんなときこそ、シンプルに、シンプルに。
「厚生労働省が出す“新しい生活様式”をやわらかく表したものを作ってください。住民に注意喚起をしつつ、事業者も店舗などで使えるように表現してください」
というリクエストが市長から広報広聴課(現在は、広報課)にありました。
昨年6月頃のことです。2020年5月7日、厚生労働省から「新しい生活様式」が公表されました。鎌倉市としては「新しい生活様式」を実践するうえで、
その時の環境や、それぞれの人が持つ事情や特性を考慮して柔軟に実践していくことが大切で、過度な不安から他人への偏見や差別を冗長しないようにしなければならないという意識を、行政だけでなく住民の方や事業者も含めたみんなで共有していきたい
という考えがありました。制作にあたっては3つのことを意識しました。
企画段階のときは色んなポスターが気になりました。
2020年7月 大阪 梅田駅にて撮影
2020年7月 東京駅にて撮影
ポスターを、イラストレーターさんやデザイナーさんに依頼する前に表現すべき情報をまとめていったのですが、まずは「新しい生活様式の実践例(厚生労働省)」を参考にして、そこに記載されている「感染防止の3つの基本(①身体的距離の確保、②マスクの着用、③手洗い)」にフォーカスすることに。
「新しい生活様式の実践例」のなかに記載されている
「感染防止の3つの基本(①身体的距離の確保 ②マスクの着用 ③手洗い)」
あれやこれやのリクエストを「ブリーフィングシート」と呼ばれる資料にまとめ、この資料をもってイラストレーターさんやデザイナーさん、そしてアドバイスをいただく有識者にポスターのコンセプトや方針を共有していきました。
ポスターをつくるうえで重要な要素となるイラストは、雑誌や広告、そして絵本などで活躍される鎌倉生まれ、鎌倉育ちのイラストレーター横山寛多氏へ。コンタクトをとり面談のアポを取り付けました。
抽象的な意図が、イラストや言葉になっていく
数日後、市役所の会議室にてイラストをお願いする横山氏、レイアウトなどのデザインをするデザイナーさん、広報課係長と林の4人で会い、コロナ禍ということもあって挨拶もそこそこに本題へ。
私はブリーフィングシートを片手に、身ぶり手ぶりでポスターの趣旨やイラストのイメージを伝えます。
「抽象的で申し訳ないのですが、“感染防止の3つの基本“の啓発をしたいのだけれども、強制的な感じは出したくないんです。状況によってその3つができないときもありますし、人によってはそれが難しい場合があると思うんです」
とお伝えしたところ、
「ですよね。私の作風からしてもそういった強いインパクトはでにくいので、次のミーティングまでにいくつかの案を考えてみますね」
横山氏はそうおっしゃり、その日のミーティングは1時間もかかることなく終わりました。「ちょっとブリーフィングシートが抽象的すぎたかな」と少し心配になりました。
1週間ほどして横山氏からメールが届きます。「先にお見せしたほうが次のミーティングでお話ししやすいかと思って」という言葉とともに手描きのラフ画がいくつか添付されていました。ラフ画は「鎌倉に縁のある歴史上の人物」と「家族の風景」という2つのシリーズがあり、どれも「ほっこり」した気分になったり「くすっ」と笑みがこぼれるようなものばかり。
(横山寛多氏 作 2020.07)
シリーズ「家族の風景」のラフ画のひとつ
「鎌倉らしさをポスターのなかに入れていきましょう」という方針もあって「鎌倉に縁のある歴史上の人物」をモチーフとしていくことに決まります。
後日談があって、横山氏のなかでは「家族の風景」になるだろうと思っていたようです。ちょっと予想外の展開でしたとおっしゃていました。(そんなこともあって、「家族の風景」シリーズの1枚のラフ画を横山氏の許可をいただいたうえで掲載しました。これも、とてもすてきなイラストです)
ミーティングにてイラストの方針が「鎌倉に縁のある歴史上の人物」にかたまっていくなか横山氏がポツリと。。。
「住民の方にはもちろん、鎌倉に観光にいらっしゃる方にも意識して欲しいですよね、『いざ鎌倉、その前に』って感じで」
そこに居合わせたみんなで、「それをコピーにしましょう」といった流れに。そんな感じでポスターのコピーは決まりました。コピーは、ライターの方やコピーライターの方がひとりでモクモクと考えたもので決まったり、ミーティングのなかのふとした発言が採用されたり、コピーが生まれるプロセスは一様でないのが、いつもオモシロいな〜と思います。
デザイナーさんのアイデアで、ポスターのフッター部分は和の色(くすんだ黄緑の草色、くすんだ濃い黄色の芥子色、淡く明るい空色)を取り入れました。そこに、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授より「状況に応じた柔軟な感染対策」のアドバイスをいただき、それを掲載。このアドバイスもあってポスターの説明として「〜機転を利かせて対応しよう〜」という一文を添えることになりました。
できあがった3種類のポスターは、このとおり。3人の歴史上の人物をモチーフにして「感染防止の3つの基本(①身体的距離の確保、②マスクの着用、③手洗い)」を表しています。
● マスクをしようバージョン: 源義経に仕え平氏との合戦において活躍したといわれる僧 弁慶(武蔵坊弁慶)
● 距離をとろうバージョン: 「屋島の戦い」で活躍したとされる源氏方の武士那須与一
● 手を洗おうバージョン: 源氏再興を期する源頼朝に挙兵をすすめたとされる僧 文覚
「いのちを守る3つのマナー ~機転を利かせて対応しよう~」と名付けられているこのポスターですが、感染拡大を防止するための注意喚起を促すものとして有用なものと思います。ぜひ、ご活用ください。(このポスターのデザインデータは、こちらよりダウンロード可能です。ご自由にお使いください。弁慶バージョン 那須与一バージョン 文覚バージョン)
さいごに、刻々と状況が変化するワクチン接種オペレーション(接種に関する告知広報、会場運営など)を支える勤務に対して、役所の同僚ながら感謝を表させていただき、今回の「なぜそれ制作後記」を締めさせて頂きます
広報課 広報戦略ディレクター 林マサツグ
追記)
駅長さん、イラストレーターさん、大学の先生といった方々の協力あってできたポスターということで各所に確認をとり、広報課係長の赤入れのもと文章校正をしました。時間もかかりましたし、とっても疲れました。