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【前編】導入ではなく、共創するスマートシティサービス~あなたの声がサービスを創り出す~

「リーディングプロジェクト」って知っていますか?

皆さん「リーディングプロジェクト」って聞いたことありますか?
実は、2022年3月に策定した「鎌倉市スマートシティ構想」の中にも、このリーディングプロジェクトがあります。

「リーディングプロジェクト」の意味は「事業を進める上で核となり、先導的な役割を果たすプロジェクト」。つまり、本市のスマートシティの取組にも先導的な役割を果たすプロジェクトがあるということなんです。

2022年度のリーディングプロジェクトは「防災・減災」なんです

鎌倉市のスマートシティの取組では、地域課題をふまえて次の2つをテーマとした実証事業等を、2022年度のリーディングプロジェクトとして位置付けています。

①防災・減災を起点とした複数分野の連携
②市民目線の暮らしやすさ

鎌倉市スマートシティ構想「リーディングプロジェクト」より
「リーディングプロジェクト」2022年度に取り組むプロジェクトの対象領域
(鎌倉市スマートシティ構想より)

なんで防災・減災?もっとこういったことに取り組んでほしいのに!と思われた皆さんもいると思いますが、これにはちゃんと理由があります。
それでは、なぜ「防災・減災」がリーディングプロジェクトとして掲げられているのかを説明していきます。

リーディングプロジェクトは市民対話での皆さんの意見から決まったんです

それは、防災・減災がこれまでの取組の中で多くの皆さんが課題と感じられていた分野だからです。どのような機会に、どういった方法で皆さんから意見が寄せられたのか、スマートシティ構想の後半でも紹介しています。

2021年に開催したスマートシティ市民対話の様子

まず、2021年8月に開催した「スマートシティ市民対話」です。参加者の皆さんに対し、「自分や周りの人のために解決したい日常の課題」について聞いてみました。すると、防災・減災をはじめとした様々な分野について、日常の課題と感じていることが分かりました。

また、同年4月から5月に4,000人の市民の方を対象とした「共生社会の実現に向けたスマートシティの推進に関する意識・価値観調査」も実施しました。ここでは、13個の項目の中から「スマートシティを推進するに当たって、ICTを活用してほしい分野・日々課題を感じている分野」について1つ選択してもらいました。

共生社会の実現に向けたスマートシティの推進に関する意識・価値観調査の結果
(鎌倉市スマートシティ構想より)

すると、1番多かった「市役所の窓口サービス」に続いて、2番目に皆さんの日常における「安全安心」に対して、ICTの活用を期待されていることが分かりました。

このように市民対話やアンケート等で意見を募集して、市民の皆さんが重視する課題を明らかにしていきました。

課題の解決策を共創する場、官民研究会

では、実際に市民の皆さんから出てきた、自分や周りの人のために解決したい「課題」をスマートシティではどのように解決していくのでしょうか?
そこで、スマートシティ官民研究会(以下、官民研究会)という組織が出てきます。官民研究会とは、鎌倉市が2021年10月に設置した組織で、主に民間企業や大学など、現在168の団体が会員として所属しています。(2023年3月6日現在)

鎌倉市スマートシティ官民研究会/令和4年度第1回全体会の様子(2022年7月20日開催)

では、官民研究会が、どのようなことをしているのか見てみましょう。本市ホームページでは、官民研究会の活動をこのように説明しています。

①本市におけるスマートシティに関する取組事例の情報発信等に関する活動
②会員による地域課題の解決策等の提案及び実施に対する支援に関する活動
③会員間の情報共有及び連携促進に関する活動
④その他、本市におけるスマートシティの推進に資する活動

鎌倉市ホームページ「スマートシティ官民研究会」より

②に記載があるとおり、官民研究会の会員の皆さんから地域課題の解決に向けたサービスの提案を受けて、解決していきます。
でもちょっと待った!行政って民間企業と契約を結ぶ時は、入札して事業者を選ぶんじゃないの?

ここで大事なポイントとなるのが、「官民共創」という考え方です。実はスマートシティ構想の中にリーディングプロジェクトのページは、もう1枚あります。

「リーディングプロジェクト」防災・減災を起点とした複数分野の連携
(鎌倉市スマートシティ構想より)

市民のニーズや課題が複雑、多様化している中、これまでのように行政が主体となって各分野の課題の解決策を検討していくだけでは、複数分野にまたがるような課題に対し対応が難しくなってきました。
そこで、行政や民間企業、大学など、様々なステークホルダーが、それぞれの強みを活かし、複数の分野が連携した新しい課題解決のサービスを「共創」という方法で生み出していく必要があるのです。

つまり、官民研究会は、「複数分野が連携した新しいサービスを民間企業や大学等の団体と共創する場」になります。

民間企業の提案からモデル事業が生まれ、取組がスタートしています!

ところで、この官民研究会、もう動きだしているんです。

2021年12月に官民研究会の一般会員を対象に、本市のスマートシティのモデル事業として、2つのリーディングプロジェクトを中心に具体的な事業等の提案募集を行いました。そこで多くの会員から提案を受けた中でも、特に本市の課題とマッチする「避難所運営のDX」について提案をした、株式会社バカン及び、富士フイルムシステムサービス株式会社との間で今年の1月31日に協定を締結しました。

今後、2022年度のリーディングプロジェクト「防災・減災分野を起点とした複数分野の連携」を実現するため、災害時の避難所開設、運営、閉鎖までの一連のプロセスや課題を可視化していきます。
また、新型コロナウイルスの感染状況等への柔軟な対応や、災害対応職員の人手不足などの観点から、災害時の避難所におけるデジタル技術活用の可能性について検討しながら、効率的な避難所運営に向けた実証事業等を進めていきます。

スマートシティにおける、課題解決までの流れが少し見えてきましたか?
大まかに言うと、次のようなプロセスになります。

①市民や地域に関わる皆さんの意見をもとに「課題」を明確化させる
②明確化された「課題」の解決に向け、市民や地域、行政、そして官民研究会が一緒になって新しいサービスを共創し、サービスの実装に向けた実証事業を進めていく

鎌倉市のスマートシティにおける課題解決の流れ

つまり、本市のスマートシティの取組を進めていくためには、「市民の皆さんの意見」と「民間企業や大学、行政等の団体の連携」が不可欠なんです。市民の皆さんの意見がないと、課題が浮き彫りにならないし、官民研究会の団体の皆さんの連携がないと新しいサービスは生み出されない。他の取組でもそうですが、スマートシティの取組においても行政だけでは進まないんです。
キーワードは「市民参加」と「官民共創」です。次回の投稿ではこの2点について、さらに深掘りしていきたいと思います。