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漁師さんに密着!鎌倉産ワカメを届ける思い~海から受け継ぐ食文化①

春先に砂浜を歩くと、ふいに漂ってくるここちよい磯の香り。鎌倉では3月頃になると、漁師さんがワカメを収穫し、砂浜で天日干し作業をしている姿をよく見かけます。

市内の公立小中学校の給食にも登場する鎌倉産のワカメ。獲れたてのワカメを使ったメニューは「特別な給食」として子どもたちに大人気です。そんな鎌倉産のワカメは鎌倉の漁師さんたちが直接学校に届けているのをご存知ですか?

今日からシリーズ4回にわたって、ワカメを主役にこどもたちの食育と漁師さんたちの関わり方について特集していきます。

鎌倉漁協の漁師として活躍されている前田桃子さん

「美味しかったと言ってくれるのが何よりの励み。食感や味わいの違う鎌倉ワカメを堪能してほしいですね」

と笑みを浮かべるのは、鎌倉漁業協同組合に所属する前田桃子さん。
日々の漁について密着し、こどもたちに届けるワカメについてや漁業に対する思いを伺いました。

美味しく食べられるようにひと手間

まずは、ワカメがどのようにして学校に届けられていくのかに注目していきましょう。

ワカメ漁は朝早い時間帯から船を押し出して行い、長いカマを構えながら、箱めがねで海中を覗いてワカメを探します。

カマとワカメはこんなにも長いのです!(小学校の掲示板に貼られていました)

さっそく、獲ってきたワカメの加工作業などについて見てみましょう。
漁で獲れたたくさんのワカメ。海の中のワカメは意外と大きいので、海から上がったらまずは葉先はさきをカットします。

作業の様子

切ったワカメを湯がいていきます。

一瞬で色が変わるところは見ものです
太陽に当たるワカメはキラキラしていました!

通常湯がいたワカメは浜で天日干ししますが、学校に提供するものはそれとは分けて、保存します。

ワカメの天日干しは、鎌倉ワカメ漁の風物詩

若手を中心に10数名の漁師さんたちで後日学校へ配達します。こどもたちに届くまでにこのように多くの工程があるのですね。

給食を作る方に直接、届けています

食育の思い

「鎌倉ワカメの特徴は、歯ごたえと香りの良さ。こどもたちにも味わってもらい、地場の味・鎌倉の魅力に触れるきっかけや食育に貢献したい」

という思いを込めて、こどもたちに鎌倉産ワカメを届ける取り組みを行う前田さん。

給食に出てくる鎌倉産ワカメを食べたこどもたちから「美味しかった」を聞くことが何よりの励み。

しかし、近年は海藻が繁殖しなくなる「磯焼け」の影響などを受け、漁獲量が安定しないのが大変とのこと。ワカメの寿命が1年と短いこともあり、良質なワカメが獲れる期間・収穫シーズンも限られています。

「鎌倉ワカメは貴重ですが、この取り組みを続けることはとても大切なので、続けていきます。」と語ります。

日々の漁は経験の積み重ねが大切

前田さんは、ワカメだけでなく、メバルやカマス、鎌倉海老、アオリイカなど年間を通してさまざまな漁を行っています。
季節や天候、潮の満ち引きなど条件が毎日変化する中で漁の作戦を練ることが楽しいそうで、
「予想が当たったときは最高ですね」と満面の笑み。外れても「経験の積み重ねが大事」と前向きに捉え、自身の糧にしています。

「先輩の漁師さんたちは一番良いポイントを教えてくれないから」
と苦笑しつつ、「知識と技術を磨いていかないといけませんね」と話します。

将来に向けて

前田さんが、「明日にでも整備してほしい」と待ち望んでいるのが、坂ノ下で構想中の漁業支援施設整備です。というのも、現状では船を安全に係留できる拠点がないことから、砂浜に置いた船を手で押して海に出る日々。

船を台車に載せて船が浮かぶ水深まで台車を押していく様子

危険が伴うばかりか、海が荒れている日は漁に出られないなど天候に左右されやすく、漁港のある街の漁師に比べると操業日数が少ないことが問題となっています。
「よそは出航しているのに、鎌倉だけ出られないことがもどかしい。でも、漁師を続けていくためには、安全が第一。年齢を重ねるにつれ、その思いはより強くなっています」。

おいしい鎌倉ワカメをより多くの人が堪能できるようになるためにも、漁業支援施設整備により出漁できるチャンスが増え、いつでもおいしいお魚が食べられるようになることを期待しています。

魚や海藻、貝などは、私たちの食事の中で欠かせない存在です。
その新鮮でおいしい魚などを皆さんの食卓に届け続け、鎌倉の海を盛り上げていくには、漁師さんの存在と漁業を続けられる環境を整備することが必要不可欠です。
市では、鎌倉の漁業を絶やさず継続していくことができるよう、安全に漁業を続けられるよう「ミヅキカマクラプロジェクト」を進め、これからも海のあるまち鎌倉のさらなる発展に努めてまいります。

次回は、学校に届いたワカメが、どのようにしてこどもたちに食べられているのか、を紹介します。「給食の様子を覗いてみよう(小学校編)」です。
ぜひお楽しみに!